「松林宗恵監督の戦争映画は一通り見ておこうと思っての選択だが、ああ良かった。特に素晴らしい」
「どこが?」
「完璧な昭和36年の事態考証」
「昭和36年の映画だって」
「あまりに自然な昭和36年の街並み」
「本物だって」
「VFX使ってもこれはできない。背景に生々しいボロ屋とか」
「だから本物だって」
「ちゃんとアマチュア無線の従免登場。でも局免ないと波出せないよな」
「意味分からないよ」
「貼ってあるQSLカードがみんな2文字コールだよ。時代だねえ」
「意味分からないよ」
「うち1枚はJA1の2文字コールだったよ。凄いな」
「何が凄いんだよ」
「うちなんか、3文字コール、それもJK1だぜ」
「何言ってるか分からないよ」
思い出 §
「この映画ね、間違いなく子供の頃にテレビで見た。オヤジが帰ってきて子供がテレビ漫画見てるとか。みんな避難しているとき、家族みんなでお食事してるとか。お母さんが必死に走るとか。最後に国会議事堂の廃墟が出てテロップで文字が出てくるとか。これは本当のことかも知れないって」
「全部覚えていたのか」
「ともかく、よく覚えていたよ。それだけ印象の強い良い映画だったということだ」
「なるほど」
「でもね。これあったっけ、というシーンもあるのはテレビ放映時にカットされている可能性もあるな」
「ひ~」
「実に素晴らしい映画だ。まるで救いというものがない」
「徹底的に救いが無いのがいいのかよ」
「しかし、タイトルを第3次世界大戦と間違って覚えていたよ」